お茶の間だより

おばさんの呟き

ロシュフォールの恋人たち (1967) Les Demoiselles de Rochefort

久々に映画感想など…NHKBSで「シェルブールの雨傘」と一緒に放映されていたのを録画しておいて、やっと見ました。ここへ来て、ですます調から切り替えたのが自分でも調子よかったんですが、さすがに感想だと何様感が半端ないので口調変わります。


昨年大ヒットした「ラ・ラ・ランド」の監督が多大なインスピレーションを受けた作品だそうで、実は2本とも見てませんでした。私は至上主義ってほどじゃないけど昔のハリウッドミュージカルが好きで、今になって当時の現場の酷さ、差別があったことなどが話題になっていたりしますが、そんな金と権利と女みたいなギラギラした部分も含めてのハリウッド映画が好きです。見るだけだからね。

フランス産ミュージカルのこの2作を今まで見なかったのは、単に見る機会がなかったというのもありますが、多分そういう点ユルそうだなと、歌もダンスも見ていて満足出来ないだろうと思って積極的に見ようとしてませんでした。実際に見たらやっぱりその通りで「うわっ…上手くねぇ」と正直思いました。


Chanson et paroles des soeurs jumelles (LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT)

何度見ても最初の歌い出しが下手(笑)ここに至る場面で姉妹は音楽とバレエで生計立ててるという設定で笑いました。笑うところじゃないとは思いますが、笑って良いところだとは思います。

ですが、見てるうちに楽しくなってきて、おしゃれな妄想の世界に浸れば良いのだと理解しました。ディズニーランドへ行って、中は人間が入ってるんだーといちいち考える必要ないのと同じ。

最初は「この娘たちはカスミでも食べて生きてるのか」とかつっこみながら見ていたのが、「あっ…本当にカスミっていうかフワフワの綿菓子とか食べて生きてそう…」とか思いました。

ちょっと前に「けものフレンズ」というアニメが話題になっていた時、ネットの感想で「知能指数が下がる」と言われていましたが、この映画も「カワイイ~」「おっしゃれ~」と語彙力は2つで良い感じ。

予備知識なく見始めたので「ウエスト・サイド物語」のジョージ・チャキリスや「雨に唄えば」のジーン・ケリーが出て来て驚きました。チャキリスは相方の男子と二人で踊る場面が多く、やっぱ上手いです。どうしてもチャキリスの動きに目が行く。


Michel Legrand - Nous voyageons de ville en ville

「ウエストサイド物語」では冒頭のダンスなど鮮烈な印象を残す人ですが、屈折した性格、思ってるよりあっさり画面からいなくなってしまうので、楽しそうに伸び伸び踊る場面が見られて嬉しい。

ジーン・ケリーは姉妹の姉の方とお互いに一目惚れする役。私のジーン・ケリーの印象は「いいから俺様の素晴らしいダンスを見ろ!見ろ!見ろ!」って人で、捉えようによっては愛嬌もあるので嫌いになれませんが、大抵来るぞ来るぞと身構えていると空気読まない大回転、カメラが寄ってドヤ顔決めポーズ…というやつがまさかこの年で来たらぶち壊しなのでは…とちょっとハラハラしてました。

さすがにこの頃はアラフィフで落ち着いて大物ゲスト扱いですし(海外のポスターは中央にケリー、両脇に姉妹)、あまり上手いとは思えないドヌーヴの姉のフランソワーズ・ドルレアックを優しくエスコートするダンスに終始していた、ように見えてホッとしました。私がホッとする必要もないんですが。そういえばケリーは爺さんになってから「ザナドゥ」でオリビアニュートンジョンと一緒に踊ってましたね。


Gene Kelly & Françoise Dorléac

ちょっと踊り足りなさそうにも見えたりして。

この映画と前後して「シェルブールの雨傘」も放映されていたので録画して見ましたが、いやーカトリーヌ・ドヌーヴが本当に綺麗。氷の人形のような整った顔が笑うと唇がむにゅーっと両脇に伸びて、えっ笑うの…笑うとこんな顔になるの、って私でもドキッとしたので、映画の現場にいた男性たちの心労が思いやられる。

「世界的美女の最大瞬間風速的『旬』」(言ってて何これですけど)を見ている思いがしました。

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同じ撮影日っぽいのでお澄まし顔・笑顔がある写真探して来たんですが、顔向きや光の当たり具合や色調が違うとは言え、なんか別々の人っぽくないです?どっちも綺麗。

終盤、姉妹が地元のお祭りに出て、真っ赤なスパンコール衣装で歌って踊る場面があって、舞台に出ていくその背中の綺麗な事。肉感的じゃないのに目が惹きつけられるって何だろうと思ったりしましたがひとえに「世界的美女の(以下略同上)」なんだなと思いました。

ドヌーヴと言えば、近頃のmetoo騒動で、ちょっと批判したら逆に炎上してしまったらしいですね。経緯を読むと、真っ向から反対してるわけでもないですが、積年の習慣がようやく悪いことと認められつつある中で、水をかけちゃいけない局面だったような気はします。何よりドヌーヴクラスの著名人・美人が言うと影響力が強すぎるという事もあったのではないかと。

あと、私も詳しいわけじゃないですがフランスの映画見てると、倫理的部分で戸惑う事が結構あって、お国柄が独特でアメリカとも違うし、まして私みたいな日本人には理解出来そうもないとも思います。

最後に、思い出したのが映画の食事中?というかテーブルを挟んで会話する時に、発言する人物の顔の正面から捉えた映像がぱっぱっと切り替わるの、小津安二郎の映画みたいだと思いました。シェルブールの雨傘の方でも同様の場面があります。監督で一緒に検索してみたのですが関連性は特になさそうでした。まあそれだけで小津オマージュとは言えないんでしょうが、私は小津映画でのそれが結構好きなのでちょっとニヤっとしちゃいました。何なんでしょうね、「明らかに撮影時はオンタイムで会話してない」感が非現実的で良いのでしょうか。