お茶の間だより

おばさんの呟き

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 The Imitation Game (2014)

映画の感想は綴ります。私も映画を見ながらwikiや他の人のレビューを検索して見たり、面白いレビュアーがいると他の記事も見て、取り上げている映画の傾向が同じで親近感が持てたり自分が見ていない映画に興味を持って、機会があったら見ようとチェックするようになって、私のネットの楽しみの一つになりつつあります。
まあ私のレビューは感覚的でいい加減なので人の役に立つとは思えません。

映画の話。確かこれはGYAO!での無料配信で見ました。

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私はドキュメンタリー、特に理系ネタ、宇宙ネタ、近代史ネタのドキュメンタリーが好きで、モノによってはどんな映像美、神構成、豪華キャストの映画でも得られない本物の映像だけが持つ説得力を感じる。私自身は理系はさっぱりなので数式で世の中の全てを表そうとする人の脳がどんな風なんだろう、と逆に興味がとてもあります。

アラン・チューリングという数学者もそんなドキュメンタリーで知った名前で、確か数学のミレニアム懸賞問題を特集していて、細かい事は忘れてしまったのだがその問題に触れつつ、例えば「最大素数を見つけるとはどういうことか」など、映像つきで素人にもわかりやすく解説してくれて面白い番組だった。

多分これだと思うが前後に同じシリーズの番組があったのでそっちかも
NHKスペシャル 魔性の難問 リーマン予想・天才たちの闘い
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010786_00000

チューリング人工知能・AIの仕組みも予言、というか本気で作ろうと考えていた人らしく、昨年一旦終了してしまった「フランケンシュタインの誘惑」(この番組も大好きで大体見てた)のAI特集でも名前が挙がっていたと思う。ただ、功績自体はナチスの暗号「エニグマ」を解読し、祖国英国をナチスの恐怖から救ったということがメインらしい。

そんな理系近代史+「シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ主演ということで、楽しく見ました。

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一言でいうと、「戦時中版/ジョンのいない『シャーロック』」だった。笑

別に不満は全くないんですが、ナチス暗号の謎解きや、仲間にスパイがいる?と思う時のひらめき方が「○○…?いや、でもそうだ、間違いない!」みたいな感じでシャーロック。日本語吹き替えもシャーロックと同じ三上哲さんだったので、字幕版見てから吹き替え版も見たら、よりシャーロックだった(笑)。いや好きだから吹き替えも見たんですよ。
「シャーロック」も初回放送をたまたま見ていて、衝撃的に面白くて毎回新シリーズの放映を楽しみに待っていました。もうこれで終わり?なのかもしれませんが、人気になればなるほどシリーズが伸び、蛇足設定が増え、新しい役が設定され誰おま状態という人気ドラマのよくあるパターンと一線を画して綺麗に終わった感じがして終わってからますます名作になった感じ。

そのうち次女までハマって一緒に見たり、英語学習用に書かれたコミック版を欲しがったので買ったり。そんな次女と私の感想は「実はベネさんよりジョンが良い」。シャーロックが奇行と思われようと突っ走るのにオロオロしたり、引き止めたり、時にはツッコミを入れたりという相方がいないと物足りない。

そういう意味では、この映画では孤独さが際立って良かったかもしれません。狙ってたわけではないでしょうけど。一応結婚もしてスタッフの一員となる奥さん(キーラ・ナイトレイ)もいるんですが、馴れ初めも本当に好き?みたいな微妙な含みがあって、奥さんもチューリングを尊敬して天才だと思ってるんだけど、変な距離感があるように私には感じられました。キーラ・ナイトレイも美人だけど、男に従順な女性って感じじゃないのでそのせいかもしれませんが。

長さも内容の割に短めな感じで、サクサクと話が進んでしまうので、1回見ただけでは細部がわからないタイプの映画だったかもしれません。私は吹替版と2回見たわけですが、吹替は声を聞くために見てたようなものでやっぱりわかってないような気がする…

個人的には、ドキュメンタリーで紹介されていたチューリングの写真はもっと内気というか、「声をかけられないとずっと機械に向かってそうなオタク」のイメージで、役者としてはマーク・ラファロとかニコラス・ホルト(マーベル系の「科学者」役しか思いつかないw)みたいな方が実像に近いような気がしました。ただ英国人の伝説を映画化するならやっぱり英国役者、超人気者のカンバーバッチいてこその映画になったとは思います。この映画のチューリングは変人なんだけどオタクじゃないんだよなぁ…やっぱり「シャーロック」でした。うん。

チューリングのAI提言も、実は学生時代の親友が病死してから蘇らせるために、彼を再現させるためにAI開発を本気で考えていたらしいと言われていました。チューリングの場合同性愛者であったことが知られていて、どうやらその親友にも恋をしていたという説があるらしい。

その辺の描写が映画でどうなるのかと思っていたけど想像以上にソフトというか、最後の最後に明かされ、セリフで贖罪(当時は同性愛は刑法上で罪)のために薬物治療を強いられていることや、ほんのりした回想で学生時代の親友と仲良く話している光景を懐かしむ…程度だったように思う。

この手の映画でエロ場面なんか望んでいないし、主題も天才的数学者がスパイの妨害にも負けず解読を成功させたという逸話だけで十分物語になるんですが、ちょこちょこ「変わり者」である中にどうやら同性愛者らしい、という表現が匂わす程度に入るのが、最後に何かあるのかと変に思ってしまっていたらそんなことはなかった。しかし、この映画でのチューリングの性癖は近年の差別解消活動におおいに取り上げられたらしく、話題になったそうです。

別な話になりますがwikiに、映画の中で描かれた事について論争があったとかで、脚本家がそれについて語ったという話が面白かったので引用。

2015年1月、脚本家のムーアは『ハフィントン・ポスト』で映画の歴史的整合性に関する批判について「ある映画を語るときに『ファクトチェック』という言葉を使うのであれば、その人は何というかアートの仕組みを根本的に誤解している。モネの『睡蓮』をファクトチェックする人はいない。睡蓮はそう見えない、睡蓮はそんな感覚じゃない。でもそれが作品のゴールなんだ」と述べた。同じインタビューでティルドゥムは次のように語っている。「歴史映画はたまにウィキペディアの記事を読んでいるように感じられる。『彼はああして、こうして、そしてこうしました』と暗唱して、まるでヒット曲のコンピレーションみたいだ。我々は映画を劇的で情熱的にしようとした。我々が目指したのは、ゴールは、アラン・チューリングはどんな人か、彼の人生はどんな感じか、アラン・チューリングになるとどんな感じか、というのを届けることだ。彼の人生を通じて、観客に『アラン・チューリングらしさ』を体験させることができるだろうか、と」

wikipedia イミテーション・ゲーム#論争

 https://goo.gl/XxE6MZ

チューリングは近代の人なので生き証人が健在であれこれ違う、という論争があったらしくそれを受けて脚本家が語った事だそうです。

実際の人の一生には、wikiのような一次元だけで語れる以外にも色々な側面があると思うし、トリビアまで全部盛り込んで物語で描くとしたら、皆性格破綻者になっちゃうとは思う。それくらい人間は複雑だし、でもそれをわかってる上で二次元的にキャラづけがされて物語になって、ぶっちゃけ嘘だらけなんですが複雑な人間たちの一瞬の事実だけは本当だったりして、その感動を作るために物語って作られているのかもしれません。

逆説的にwikiが全部正しいとは限らない、という話もまた別にありますが、マニアほど「真実」以外を受け入れられないとか、すごく人気作ほど「元ネタがあるのに」とか「正直パクリじゃないの?元の方がもっと評価されていいはず」って不満を誰しも持ってしまうものかと。私もまあよくありますが、色々考えさせられ、ちょっぴり反省しました。

言いたいこと言っちゃってますけどね!やっぱり。

もう1回見ておきたい映画かも。
フランケンシュタインの誘惑」も再放送してくれたら全部録画し直したい。
(あっ…なんか検索すると動画が見つかったり…?多分消されるので貼りません)


フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」コトハジメ
http://www.nhk.or.jp/bs-blog/2000/242990.html