お茶の間だより

おばさんの呟き

「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」 Yankee Doodle Dandy(1942)

ジェームズ・キャグニーがひたすらカワイイ映画

先週、ちょっとした事があって配信サイトに仮登録してしまいました。しばらく無料期間の間見たかった映画を見まくっていて大変な事になってますが、テレビ放映録画もたまる一方。最近NHKBSで放映されたこの映画について感想を記しておきたくなりました。

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映画としては笑っちゃうほど平凡な「戦時中のハリウッド国威発揚ミュージカル」。戦前の興行主コーハンの伝記映画の体を取っていてヒットするまでの苦労、ヒットしてからの苦労もそれなりに描かれるものの、基本的にトントン拍子で出世するわ、問題児の主人公に家族や妻、周囲が寛容すぎて一種異様ですが、そういう時代と思うとまあ楽しいです。

主演はジェームズ・キャグニー、癖のある風貌でギャング映画のスターとして有名だったそうです。
実は、この映画でキャグニーが身軽なダンスを見せる場面は1984年の「ザッツ・ダンシング」という、映画のダンス場面を中心に編集して当時の有名人がコメントするダイジェスト映画で何度も見ていました。

この映画ではバレエの場面もあって、ミュージカルではなくバレエの記録映像として残されたヌレエフの全盛期や「愛と喝采の日々」の中で超絶技巧を披露するバリシニコフの「海賊」のダンス(これ探してもyoutubeにもない)等々、貴重なダンス映像もたっぷりあってダンス好きにはたまらん映画なのですが、おそらく権利関係の問題などで今は製品化、配信もされておらず古いDVDで入手するしかないそれ自体が伝説の映画になってしまいました。

で、この「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」自体も未公開、youtubeで有料配信はしていますが、こっちはこっちで差別的、軍国主義の表現もあってそういう時代の映画、として見るなら面白いかもという程度です。

そんな風に一応見ておくかと斜めにかまえて見ていたのですが、「ザッツ・ダンシング」でダンス場面だけ見ていた "Give My Rgards to Broadway"の場面で胸が熱くなってしまいました。


Little Johnny Jones (Yankee Doodle Dandy)

画質の良い動画がなかったです。

この場面は「ザッツ・ダンシング」で紹介された時に「劇中劇、失意の騎手が疑いを晴らす合図の花火で踊り出す主人公」というのも知っていましたが、寂しそうな表情と姿、一転やったぜと観客に向ける笑顔が素晴らしい。キュート。

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この顔。ああカワイイ

キャグニーのダンスはダンサーというより曲芸に近く、身軽さと速さだけが命でくるくる回るときもいわゆる「首がついてない」しダンスとしては変なのに、むしろそれが可愛い。チャーミング。かくし芸的に披露した?この映画1本でギャング映画スターだったキャグニーの代表作の一つとなり、レジェンドとなり、多くのハリウッドダンサーから尊敬されていたという逸話が理解出来ました。前述のバリシニコフもファンだったとか。バリシニコフは顔つきや小柄なところが自分と似ているから、という理由をどこかで見たような。

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キャグニーとバリシニコフ。どっちも楽しそう

後半は映画も戦争に突入し、映画の観客とストーリーを違和感なく進めるための劇中劇も国威発揚のものが増えて行きますが、最後の最後にまたキャグニーの身軽さとカワイイところが見られて楽しかったです。

そもそも題材のコーハンが愛国主義の歌を多く作った人だそうなので、戦時中にこういう映画を作らなくていつ作るくらいな感じだったでしょうし、冒頭でもアイルランドアメリカンな事を売りにしてたりと、日本でいうところの「差別的な表現が含まれますが当時のままのうんぬん」的な字幕が冒頭にあってもいいくらいな映画でした。だから長らく見る事ができなかったのかもしれません。

映画的には目的が国威発揚と中身が薄い感じではありますが、仕事がなくても腹が減っても、吊るし上げられても平然と冗談を言って戦争すら乗り切って行くキャグニーの姿は確かに見終わって兵士たちを爽やかな気分にしたのではと思いました。