お茶の間だより

おばさんの呟き

憧れだったソファ

私の住む地域の粗大ごみ回収は、木曜日。そして、3日前までに申し込みをしなければならない。
昨日、ようやくソファを捨てる決断をしたので忘れずに電話した。この「忘れずに」が意外と難しい。大抵週明けでドタバタしていると電話するのを忘れてしまうのだ。インターネットでも受付してはくれるが、大きさによって回収処理の手数料が違うので、自分で調べなければならず、微妙な大きさのものはやはり電話受付が安心。

f:id:ys669:20180312141851j:plain

このソファは、おねだん以上のCMで有名なあの家具店で買った。
今までに色々と世話になっているものの、正直「おねだんなり」という印象が強い。このソファもスプリングがすぐ駄目になった上、背もたれに凭れていると逆に首が疲れる。最初はテレビの前のリビングに置いていたのだが、ソファの下に敷いた絨毯に座り、ソファの座面のところに背中を凭れかけさせるようになってしまった。

おねだんなり、というのはそういうところで、他は小物程度しかないが、キッチン用のザルは持ち手の方が重く傾くので、持ち手を洗い桶に乗せないと麺類の湯切りの時に引っ掛けないと安定せず、たまに麺ごとお湯を流しにぶちまける羽目になる。保温水筒は保温機能は悪くなかったが、開閉式のキャップの留め金がすぐ砕けて使えなくなった。

しかし、ソファは我が家、というか私と夫の悲願だったように思う。
結婚して間もなくの頃、夫の姉、義姉一家を訪問した。一家は地方の新しいマンションに住んでいて、一姫二太郎の典型的な幸せ家族でリビングにはソファがあった。やがて私たちも子供を授かったが、保育料のためにフルタイムで働き、子育てと生活に追われ、寛ぐ余裕もなかった。二人目が生まれて2DK賃貸が手狭になっても、駅から近く便利だったし、その分の家賃や引っ越し費用が浮くと思い次第にモノが増え続ける中で生活した。ソファなんて夢のまた夢だった。間取り的にもどう考えても、一人用のソファも置けなかった。

今の住まいになったのは、中学に上がった長女が、たまたま4月でもとても寒い日が続いていた年だったので、ある日泣きながら「寒い、家が遠い」と帰ってきた。それで夫が重い腰を上げた。新しい住まいは建物は古いが3LDKで、LDKは2つの部屋の壁を潰して繋げてあるもので、12畳近くスペースがある。家賃負担増はきつかったが、これで子供も満足、私達もやっとソファが置けるリビングに住めるようになった、と思った。前後して私も仕事を一旦休んだ後、スローペースでぼちぼち在宅で出来る事を、という新しい生活への切り替えも期待していた。

しかし、実際はソファを置いたものの、子供たちがそこへ座ったり寝転んでいると夫は、姿勢が体に悪いと注意し、ゲーム機やスマホを弄っていると文句をつけるので、子供たちは逃げるようになった。

私は元々テレビを漫然と見るのが嫌いだった。実家の親、というか私の親くらいの世代は皆同様と思うが、家にいるときは見ていなくても取りあえずテレビをつけている。今は録画消化の時くらいしかテレビはつけないし、私はなにか作業しながらでしかテレビを見ない。

ともかく、家族親が家に居ればテレビを見るので私は座らず、一人でいるとパソコンやら家事やらで尚更ソファには座らない。あれもやってない、コレもやってないと感じる中でソファで寛ぐ習慣なぞ身につかなかった。

しかし、ソファ周りを掃除したり、カバーを変えたり、上に置かれたものを片付けるのは私の役割だった。と言うか、誰もやらないので私が汚れが気になったり、気分転換したくなると洗い替えをする羽目になった、ということだ。たまに掃除すると、ソファの下から探していたものやゴミが出て来るようになった。

やがて、思い切って壁際に置くと皆が「部屋が広くなった」と喜んでいた。その前から、ソファの上は物置きになりがちという話題は知っていたが、ますます「物置き場」になった。写真を撮るに際して、あまりにも切ないのでどかしたが、この上にバランスボールと、コタツ布団と、もう仕舞う予定の冬用の厚地の衣類が置かれていた。

ソファは、残念ながら幸せ家族の象徴とか、くつろぎスペースには我が家ではならなかった。義姉一家もその後、ほどなくして義実家のある近所に戻って来、綺麗なマンションは手放してソファの置けない住まいを2つほど変えて、やっぱりソファが置けない義実家で義両親と同居になった。義姉にしてみれば、別にソファは家族団欒の象徴でもなかったのかもしれない。
しかし、それでも一度置いてみなければわからなかった事ではあった。私の夢の残骸、というほどでもないけど、それでも一つの夢であった事には変わりなく、ゲットしてみたら特に要らなかったというありがちなオチになった。でも「念願のソファのある生活」は叶ったのは確か。ありがとう。